特別賞

小玉さん

札幌大通学習センター(3年生)

 これまでの人生の中で、何度ありがとうという言葉を使ってきただろうか。家族や友人、学校の先生、バスの運転手さんにまで、私たちは日常的に感謝の言葉を口にしている。しかし、私には今まで一度も感謝の気持ちを伝えていない人が一人だけいる。それは、「自分自身」である。

 普段から自分に感謝を伝えている人はどれくらいいるだろうか。そもそも、自分に感謝を伝えるということはどのようなことなのだろうか。

 私は高校二年生の春、ヒューマンキャンパスのぞみ高校に転入した。高校一年生の時、不登校になったからだ。中学三年生の時に志望校に合格し、新しい環境で良好な人間関係を築くことに期待していた。しかし、人に合わせてばかりで自分の意見も言えず、自分のことが嫌いになっていった。違う人生があったかもしれないと後悔し、今の自分をもっと認められなくなった。

 学校を楽しいと思えないまま三年生になった。ナナイロレッスンを先生に紹介され、プレゼンテーションをする活動に参加した。新たな人間関係に不安を感じつつ、きっと何か自分のためになると思った。最初は、知らない人ばかりで不安が募る一方だった。話し合いの時には、なかなか自分の意見を言えず、みんなの話を聞くことしかできなかった。回数を重ねていくうちに、私はみんなの優しさや温かさに触れるようになった。人と話すことが苦手な私も、この場を通して飾らない自分を表現できると思った。それからの私は、積極的に発言するようになり、周りの優しさに居心地の良さを感じていた。ナナイロレッスンの活動は、私に居場所をくれたのだと思う。放課後にはみんなで遊びに行くこともあった。素敵な友人がたくさんでき、大切な時間を今でも過ごしている。

  ナナイロレッスンを通して、私にはいくつかの変化があった。まずは、学校内での交友関係である。これまでの会話は少しぎこちなかったが、ナナイロレッスンの経験を活かし、自ら発言すると、相手も応えてくれて、話が盛り上がるようになった。一番大きな変化は、学校に行くことが楽しくなったことだ。学校に行ったら友人がいて、時間が許す限り話をし、一緒に帰る。こんなにも楽しく、充実した人生に変わった。周りのみんなの優しさと温かさがあったから私は変わることができたのだ。

 もし、私がナナイロレッスンに参加していなかったら…この学校に転入していなかったら…不登校になっていなかったら…楽しく充実した学校生活は存在しない。

  人生は選択の連続である。誰しも、あの時こうしておけばと後悔することはあるだろう。でも私は、これまでの選択はすべて、正解だったのだと思う。間違いなんかじゃなかったのだと思う。今なら、私は自分を認め、好きでいることができる。自分に感謝する行為は、生まれてきたことに、その道を選んだことに、一歩を踏み出し歩んできたことに、これまで自分がやってきたこと全てに、感謝することだと思う。もちろん、その道の途中で助けてくれたたくさんの人たちに感謝を伝えることも大切である。私は今、これまでに感謝することを忘れてしまっていた分まで、たくさんの選択をし、その道を歩んできてくれた自分自身に、目一杯のありがとうも伝えたい。

  自分自身に感謝できると、自分に自信が持てるようになると私は思う。私は将来、以前の私のように自分を好きになれない人が、自分に感謝をし、自信を持ち、自分を好きになれるような仕事がしたい。自分に自信が持てず苦しんでいる人が、自分にありがとうと伝えることで、自信を持ち、自分を好きになれたら素敵なことだと思う。そして私も、自分に感謝することを忘れず、これからも生きていきたい。